Panasonic RX-ED55省電力化改造


災害時やアウトドアに役立つような、小型で低消費電力、ステレオスピーカ搭載でそこそこの音質が得られるラジオ&CDプレーヤがあったらいいなと、ふと思いつきました。
出来るだけ安くそれが実現できそうなのは、やっぱりジャンクの利用です。ということで、熱が冷めないうちに早速H/Oで小型CDラジカセを入手し、消費電力を抑え低電圧でも動作するよな改造を行います。
電源に太陽電池を使えば地球環境に優しい(?)オーディオシステムを構築できます。

今回はたまたま\1000で手に入った松下のRX-ED55を用います。
野外で使うことを前提に、チューナが電子式のを選びました。バリコン式ですと温度変化によりチューニングが微妙にずれてしまうため、直射日光が当たるようなところで使うと結構イヤになりますw


調査

本機は98年製造ということもあり、小型・軽量化されデザインもシルバーを基調とした典型的なデフレラジカセとなっています。なのでちょっとでも擦ると塗装が剥げて汚く見えます。
ジャンクの理由はCD・ラジオのみ動作するというもの。

電子回路は大部分が1枚の基板に収められています。
バックライトには電球が、またその駆動には6Vの定電圧回路が使われています。
オーディオパワーICのAN7135と9V定電圧ドライブ用のトランジスタは放熱器に取り付けられています。
AN7135は無信号時動作電流が24mAと比較的小さく、動作電源電圧も6Vから可能なため、とりあえずはこのまま使ってみます。
定電圧回路。バブル期のものではローム製のICを使っている場合が多かったですが、こちらではディスクリートで組んでいます。
こちらはカセットテープ関連の回路。
AN7348、BA7755A,モータドライブ用トランジスタ,モード切替用電磁石ドライバ、録音アンプなどがあります。
一部の回路は他のファンクションでも動作しています。
こちらはチューナ部。BU2616,TA7358,LA1832など。AMステレオ非対応。
こちらはサウンドコントロールIC(BH3857)。
電子ボリュームとEQ、サラウンドが入っています。
スピーカはバスレフ式で本体背面にそれぞれバスレフポートがついています。正面にあるのはダミー。やや箱鳴りしているような感じがするため、吸音材を入れると良くなるかもしれません。
ユニットは8センチの3Ω8Wフルレンジ。割と好みの音が出るのですが、なんとエッジがウレタンです!
軽く触った感じですと、弾力がやや失われ色も黄色がかっており、もう時間の問題かと思われます。
気づけばバブカセ屋敷の住人さんのとこでもED55は紹介されており、もっとはやく気づくんだったと後悔。

しかしまたなぜにウレタンなのか・・・・

改造
C251と151はBH3857の音声出力を結合するためのコンデンサで、0.22uFが付けられています。
低域が物足りない場合はここの容量を上げると改善されました(写真は4.7uFに交換したところ)

低域の量は消費電力に大きく関わりますので、最終的には元の容量に戻しました。
C152と252はAN7135の音声入力を結合するためのコンデンサで、0.22uFがつけられています。
ここの容量を上げても同じ効果が得られます。
ACプラグにはトランス電源と電池電源の切替えスイッチが入っていまして、ここの接点はよく酸化します。
本機も接触抵抗が30Ωほどありましたので、ヤスリで磨いておきます。
パターンカットを行います。ヘッドがさびていてカセットは使い物にならないためカセット周りの回路への電源供給を全て絶ちます。

またCDデジタル出力のためのTOS-LINKも取り外します。
バックライトは無いと不便なため、電球をLEDに交換します。また電源は専用の定電圧源からではなく、9V定電圧電源からとります。LEDは2個とりつけ、それぞれ9Vで7mA程度流れるようにします。
9V定電圧回路には電流制限回路が入っており、約1Aの電流制限が掛かるようになっています。しかし電流検出抵抗(0.5Ω)での電圧ロスも無視できないので、これらはバイパスさせます。
パワーアンプのスピーカ結合コンデンサの容量を下げ、ポップノイズを含め低域を絞ります。できれば470uFくらいが良かったのですが手元になかったので680uFに変更。あんまり効果無しw
本機はメイン電源電圧(電池電圧)が8.5V程度を下回ると電源が入りません(or 切れます)。しかし各回路の電圧マージンはそれ以下までありますので、この電圧を監視している部分を弄ってやれば、さらに低い電圧で動作が期待できます。
電圧監視は2重になっているようで、マイコンで行われています。
1つめはメイン電源を監視し、2つめは9V定電圧化後の電圧を監視しています。
前者はトランジスタを用いたインバータを通し、8.5V以上であればマイコンにLを送り続けます。そこでメイン電源からインバータのベースに入る抵抗を調整し、5V付近でも出力がLになるようにしました。
後者は9Vを抵抗で分圧し、1.6V弱をマイコンに送ります。それより低くても高くてもダメで、液晶にU02だのU01だの表示が出て電源が入りません(or 切れます)。電池の過放電や過電圧(回路故障?)防止対策と思われます。
電池は太陽を使いますので、この際どうでもいい話なので、右のようにシリコンダイオードを3つ繋げて1.5Vを作り、9Vから供給することで電池電圧が8.5v以下でも動作するようにしました。

結果
結果です。FMラジオが正常に受信でき、それなりの音量が安定して得られる条件で測定しました。
状態 消費電流 条件
改造前 約330mA 電源電圧12V、VOL:23,音質:CLEAR,FMステレオ受信時
改造後 約190mA
約130mA 電源電圧5.9V、VOL:23,音質:CLEAR,FMステレオ受信時
改造前と比べて約42%省電力化に成功しました。おそらくそのほとんどはバックライト電球による消費であったと思います。

今回の改造では、FMステレオ受信可能な電源電圧の下限は5.6V程度でした。ただしCD再生はモータを使うため最低6V程度必要で、電流も280mA程度になります。
外部電源を用いる際の逆接続防止対策としては、一番簡単なのはSBDを+ラインに入れておく方法があります。
しかし電源電圧が本機の下限値付近の場合、SBDでの電圧降下による影響が出てしまいます。
私は写真の太陽電池(解放7V、短絡300mA)を使いたかったため、電源ラインに2Aのヒューズがあることを利用し、数A流せるSBDをヒューズの後に取り付け、逆接続されSBDに2A以上流れるとヒューズが切れるようにしました。

スピーカ口径が8cmと能率が悪いため思っていたほどの電圧で音量を得られませんでしたが、小型・軽量ですし(松下機としては)リモコンも使え、晴天時には上の太陽電池で快適にラジオが聴けるのでとりあえずはよしとします。
それにしてもウレタン・・・ あと何ヶ月もつだろうorz

おまけ

カセットを使わなくしたのでファンクションが1つ減りました。
しかしそれを放っておくのは勿体ない、AUXをつけましょう。テープが選択されると外部入力からの音声が出るようにします。

ということで回路を解析したところ。デフレ機らしく、音声選択はセレクタIC(アナログスイッチ)ではありませんでした。
ソースそれぞれは抵抗により単純に加算?され、それがBH3857に入っていきます。ただしそれでは、例えばテープ選択時にチューナからの音が出てしまいます。そこで使わないソースはミュートをかけたり電源を切ったり、という感じてマイコンが制御しているようです。

テープ音声はAN7348の5番と20番から出ているのですが、それぞれはトランジスタによるスイッチを経てBH3857に入ります。トランジスタはテープが再生状態になるとベースがLになり、スイッチがオンします。そのときチューナ音声はLA1832によりミュートされており、CDも停止しているためこれらからは音は出ません。
マイコンからはCD選択時にHになる信号(CDHとします)とチューナ選択時にLになる信号(TULとします)が出ています。それを使い、TULをインバータで反転させCDHと/TULの和をとって先のトランジスタを制御してやれば、テープ選択時のみトランジスタがオンになるためAUXからの音がチューナやCD選択時に混ざることが無くなります。
また、AUXは2V程度の入力をさせます。AN7348の5番と20番をカットしてそのまま入れるとかなりの大音量となるため、直列に47kΩを入れて減衰させます。
右図の点線で囲ったところが追加する回路です。
AUX入力端子はジャンクマザーから取った3.5φステレオ端子を、TOS-LINKを外したところに取り付けました。
改造後。47kΩ以外の全ての部品は、テープ関連の回路から剥ぎ取りました。制御信号を取る箇所は写真右の2カ所です。

ちなみに、もしテープ以外のファンクションでAUXからの音が混ざっても良い(他のファンクションではAUXに何も入れない)というのであれば、47kΩ抵抗の追加と先のトランジスタのベースをGNDに落とすだけで改造は完了です。
こんな感じでジャックイン。
特に歪みもなく良好な音質が得られます。

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