DIATONE DS-300のツィータ修理




DIATONEは数々の優れたスピーカシステムを開発していた素晴らしいメーカだったと思います。
私自身、DIATONEスピーカはかなり前からカタログ上でその美しい仕上がりに惚れていましたが、実際に音を聞いたのはごく最近のことです。それは友人宅でDS-77Z,AU-α607EXTRA,DCD-1630Gの組み合わせでクラシックを聴いたもので、そのときからDIATONEスピーカの魅力にすっかりはまってしまいました。
現在では中古での入手しかできませんが、やはり良いスピーカというのは高値で取引されています。またDIATONEのスピーカはスコーカやツィータにボロンを使うことが多く、そういった製品は経年による老化があることからリスクが高く、中古入手は心配です。

今回のDS-300は、中古オーディオショップで「ツィータビリ付きあり、現状渡し」を¥3Kで入手しました。
アパート暮らしであるためスピーカでの音だしは基本的にできないのですが、アパートの壁は低音に関しては筒抜けになりますが中高音は割と遮断性があるようなので(*)、どうせ非力なアンプしかありませんから低音は出ませんし、またクラシック用に小音量で使う予定ですので問題ないと考えました。
この機種はDIATONEスピーカの中では下位クラスですが、購入の決め手となったのは手頃な値段と大きさ、キズ汚れもほとんど無く、サランネットのほつれも無くて外観良好である点です。
また下位機ゆえボロンは使われてないのですが・・・

(*:とはいっても通常の会話をする程度のレベルが限界)


現状

輸送は節約のため自転車で行いました。これ担いで片道1時間は結構きつかったです(^^;
また輸送中、片方のサランネット下部がエアキャップを貫通して自転車のカゴに接触していたらしく、1cmほどほつれができてしまいました。

購入前に「ツィータビリ付きあり」について店員に訊いたところ、「スイープ信号を入れて若干のビリ付きを感じただけで、通常の音量で音楽を再生させる場合には気にならないでしょう。」また、「そういう値付けなので試聴はできない」とのことでした。
3日悩んだ結果購入を決意し、早速家で繋いでみたのですが、なんとツィータ両方から音が出ません!! どんなに音量を上げても、ウーファからしか音が出ません・・・
ツィータをはずしテスターで当たってみたところ。2つとも完全に内部で断線しているようです。おそらくボイスコイル断線でしょう。
箱背面。小型の割には広帯域で、ずいぶんと大きな入力に耐えるようです。

ツィータ修理(1個目)

ツィータから音が出なく途方に暮れてしまいました。販売店にクレームつけるのも面倒だし、メーカから部品取り寄せるにもお金がかかりそうなので、もうこうなったらやけくそでツィータ分解して断線を直そうと考えました。

もちろん、これにより仮に直ったとしても特性は元の正常な状態でなくなるため、元の音は再現できなくなります。私は音が出ればそれでいいと考えているので、こうしました。
エッジをフレームとコイルからはずし、ダンパーの縁とリード線をカッターで切って、こいつらを取り出します。
この状態でリード線より導通確認しましたが、やはり反応なし。つまり断線はボイスコイル周辺になります。
どこかで断線しているはずなので、まずボイスコイルを解いてそれを確認し、問題ないようなら巻き直すことにします。
はじめにコイルを解くのですが、2層コイルの内側と外側で、同じ導線を使っているはずなのにその色が違って見えます。写真は2層目(外側)の解き途中。またコイルからはトランスの焼けたような独特の匂いがします。
となると、どうやらかなり大きな信号が長時間入力されていたようです。導線のショートはありませんが、絶縁度が低下しているため本来なら再利用するものではないでしょう。
発熱によって導線がもろくなっているのか、切れやすくなっていますので慎重に扱います。それでも巻きはじめの5cmほどを切ってしまいました。
解いた導線の導通は問題ないようです。これを巻き直します。

ということは、断線の箇所はコイル巻き始めか終わり付近になるのでしょう。


1層目が巻き終わったところ。慎重にやっているつもりでも、やはり手巻きだと線間にかなり隙間ができるようで、元々1層目で巻き終えなければいけない長さまで巻けません。2層目はさらに難しく、かなり線が余ります(30cm程)。かといって3層まで巻いてしまうとコイル径が大きくなり、ギャップが狭いため3層目コイルがプレートに接触してしまいます。
仮にその残り分を切断してしまうとコイルのインピーダンスが大きく変わってしまうため、それは避けなければなりません。そのため、残りの分はコイルとダンパーの間のわずかな隙間に巻くことにしました。
これによりインピーダンスは元と変わるはずで、もはや音質がどうのこうのとか、そういう評価はできないレベルにまで達していますw

*ボイスコイル巻きは,むかーし手作りスピーカにはまっていたときにやっていたので、懐かしかったですw

ボビン部にあるリード線の根本の部分に半田付けしようと思ったら、ダンパーを焦がして5mm*1mm程度の穴を開けてしまいました。また熱によりダンパーが歪んでしまいました
さらに、巻き始め線とリード線をハンダ付けしようと思ったら、ハンダメッキしているのにも関わらず全然付いてくれなくて悪戦苦闘し、そのうちリード線が根本から切れかかった状態になりました。

(写真は2個目のツィータのものです。2個目でも同じことをやりましたw)
そこで、リード線は切ってしまってポリウレタン線で引っ張り出してリード線代わりにします。まず巻き始め線とポリウレタン線を半田付けし、接着剤でボビンに固定します。

(これも2個目の写真)
そしてこのようにダンパー上に引っ張り出してきます。使用したポリウレタン線が割と硬いため、十分な長さをとってリード線とします。
大きなピストンモーションは無いため切れることはないと思いますが、ポリウレタン線の硬さによりどの程度特性に影響するか心配です。

(これも2個目の写真)
とりあえずできました。このまま音出してみると、特に違和感なく高域が聞こえてきました。
が、やはり巻きがあまいためプレートとの余裕度が無いのか、指でコーンを少しでも傾けるとコイルが接触し、妙に中域が強調された音になってしまいます。

ツィータ修理(2個目)

1個目の経験から、断線はコイル巻き始めか終わり付近、とくにボビンのリード線とボイスコイル線接続部からボイスコイルに入るあたりで起きていることが考えられ、そこをカットしてそれぞれコイル端から数cm解き、テスターで当たってみると導通を確認できました。

特性を揃えるためには1個目と同じようにコイルを解いて巻き直す方法が良いのですが、なんだか嫌な予感がするので(解き途中で導線がプッツリとか)やめときました。
あとは1個目と同じ要領でリード線を接続し、導通を確認します。
で、こいつにもまた災難が降りかかりまして、なんとコーンを割ってしまいました
マイナスドライバーを使いエッジをコーンとフレームから分離するさいに、手が滑ってマイナスドライバーの先端をコーンに力一杯突き刺してしまい、ごらんのようにセンターから周辺にかけて一直線に切れ込みが入ってしまったんです。(写真は補修後なのでわかりにくいです)
その場で1分近く固まりましたが、もうこうなったら開き直るしかないのでw、アロンαでできるだけ継ぎ目のギャップができないように接着してしまいました。
このように幾多の困難(災難)を乗り越え、仮音だしに行き着きつきました。この段階ではエッジは付けていません。
特性が両者で完全に異なっているため、音質がどうのこうのとか言えませんが、割とマトモになっているようです。1個目の方がややキツ目の音がするように感じました。

ツィータ修理(最終段階)

順序が前後しますが、さっきの写真です。
右図ではコーン割れを補修後、切り離したダンパーをボンドで接着しているところです。
ダンパーの接着は、まずセンターを確実な位置にするためにアロンαで数カ所を仮接着し、それで固定できたらボンドで全体(1周)を接着させた方が良いです。
エッジを取り付けるに当たり、まずティッシュでコーンを固定します。こうしないとストロークにより上手くエッジとコーンが接着しません。
そして周辺に少量の接着剤を塗布します。
コーンとエッジが接着できたら、ピンセットでティッシュを取り出します。慎重にやらないと、せっかく接着した部分が剥がれますw
最後にフレームとエッジを接着させます。
このように重しを乗せて接着させます。このサイズがまたピッタリなことw
で、試聴してみますとエッジを付けていないのと比べて中域が出るようになります。
しかしマスキングされているのか分かりませんが、高域が弱くなっているようにも感じます。

で、さらに問題がありまして、2個ともエッジを付けた状態で聞き比べると、2個目の方が明らかに中域が出ています(出過ぎという感じもします)。センターは合っているようなのですが、DS-300本来の音を聞いたことがないので、どっちがより元の音に近いのか分かりません!!

もうこうなったら音質をどっちかに合わせなくてはならないので、ボイスコイル特性変化の小さい2個目の音を基準に1個目を再調整することにしました。
で、写真はありませんが1個目をまた分解し、ダンパーの位置合わせから調整し直し、エッジの接着を行いました。再分解するときに気づきましたが、1個目のはコーンとエッジが上手く接着されていなかったようで、場所によっては浮いていました。
で、接着し直して聞き直してみると、確かに前よりは中域のバランスがとれるようになりましたが、まだ若干2個目の方が中域が出ています。また高域も2個目のほうがより繊細な音です。

中域に関しては2個目を再調整すれば1個目とバランスがとれるでしょうが、とりあえず現段階でもパッと聞きは同じに聞こえるため、これで様子見ることにしました。

ウーファ調整

DIATONEのウーファはありがちなのですが、経年によりクロスエッジがカチカチになります。
このウーファも案の定固化しており、コーンを押してもピクリともしませんでした。この状態でも音は出ますが、妙に中域が出た音であり、またこのコーンは液晶ポリマー(?)のためか、それがプラスチックっぽい響きになっています。
そこで5W、20Hz程度の低周波を入れ、数時間エージングさせてエッジの固化を和らげました。これにより周波数特性が改善されたためか、より自然な音になりました。

逆にエッジを柔らかくしすぎると低音が出てしまうため、このアパートでの使用には向かなくなります。
このウーファは防磁設計のようです。大入力に耐えられるよう、アルミダイキャストフレームによりガッチリと出来ています。
ネットワークはシンプルな12dB/octです。
このRコンはほかの機種のネットワークでも使われて居るみたいです。

とりあえず補修完了

CDPにPD-3000、アンプにはIC(TDA1552Q)を用いました。
音の感想としては、解像度は高くなく中域が広がる感じですが、まったり聴ける音です。
なんと言っても用いたアンプが非力すぎますので、こんな音になっているのかもしれません。でも聴けない音ではないので、これでしばらく使おうと思います。

さてなぜ断線が起こったかですが、、輸送中の振動によるものかもしれません。
加熱されてもろくなったボイルコイルが、輸送中の振動によってとくに力が掛かる(であろう)内側コイルの接続部で断線し、音が出なくなったのではないかと思います。そう信じたいです(^^;


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